毛根鞘・・・聞きなれない言葉だと思います。読み方は【もんこんしょう】です。このページを見に来ていただいた皆さんはおそらく、薄毛や抜け毛、または抜毛症について何らかの悩みを抱えていて、WEBや雑誌等で【毛根鞘】という言葉があったので「何これ?」と思われた方が多いかと思います。
ここでは、髪の毛の毛根にある鞘、毛根鞘【もうこんしょう】にまつわるあれこれを解説していきたいと思います。
毛根鞘・・・読み方【もうこんしょう】とは?
一本の体毛(髪の毛)は皮膚上の毛幹と皮膚下の毛根に分けられます。いきなり難しい表現ですが、要は普通に皮膚上に生えていて見える部分を毛幹、そして毛穴で隠れて肉眼で見れない部分を毛根と思っていただければ大丈夫です。
そして、毛根には《毛細血管》《毛母細胞》《毛乳頭》などの組織がたくさんあるのですが、その中の一つとして《毛根鞘》があります。毛根鞘は毛根にあるため、髪の毛が抜けた時、もしくは抜いた時にしか確認することはできませんが、毛根部分に半透明のぷるぷるとしたゼリー状のものがついていたら、それが毛根鞘となります。
毛根鞘の主な役割は髪の毛と頭皮の固定。つまり接着剤的な役割があります。さらに細かく分けると毛根鞘は髪の毛と接触してる側を内毛根鞘と呼び、皮膚側(毛包)に接触している側を外毛根鞘と呼びます。ちなみに、髪の毛は人によってストレートだったり、モジャモジャの天然パーマだったりしますが、毛根と毛根鞘の形で髪の毛の形は決まると言われています。
毛根鞘は髪の毛が抜けた時、毛根内に留まる場合もありますが髪の毛と一緒に受け落ちてしまう場合があり、これを見られた方は、「髪の毛の異常!?」「もう生えてこない!?」と心配される声も聞かれますが、毛根鞘は髪の毛と一緒に抜け落ちてしまっても、次に髪の毛が生えてくるとき再び生成されるので、全く問題はありません。
それは毛根鞘ではなく皮脂かもしれません
髪の毛にはヘアサイクル【毛周期】といって、《生えて》⇒《抜けて》を繰り返します。ヘアサイクルが乱れていなければ一度抜けた髪の毛は、同じ毛穴から再び生えてきます。この健全なヘアサイクルの過程であれば髪の毛と一緒に毛根鞘が抜け落ちてもなんら問題はありません。
ただし、それが毛根鞘ではなく大量の皮脂であれば頭皮トラブルを抱えている可能性があります。皮脂もまた髪の毛が抜ける時に一緒にくっついてきます。皮脂は角質と混ざりあい一見すると毛根鞘のようにみえることもありますが、毛根鞘は髪の毛に並行するように付着しているのに対して、角質とまじりあった皮脂の場合は髪の毛と並行に付着はせず、ゴツゴツして色も半透明ではなく白色をしている場合が多いのでよく見ればすぐ見分けがつくはずです。
また、毛根鞘は髪の毛と頭皮とつなぐ接着材の役割があるので髪の毛が抜け落ちた後も髪の毛としっかりとくっついていますが、角質と混じりあった皮脂は比較的簡単に取れるので気になる方は一度チェックしてみてください。では、髪の毛が抜けた時、大量の皮脂が髪の毛に付着していた場合に想定されるトラブルを確認していきたいと思います。
皮脂は悪者ではない
皮脂が原因で起こるトラブルの前に皮脂について簡単に説明しておきます。いままで皮脂についてネガティブな内容が続いてきているのですが実は皮脂は悪者ではありません。皮脂は毛穴にある皮脂腺から分泌され、紫外線等の外部刺激や乾燥、またアレルギー物質の侵入を防ぎ皮膚を守るという重要な役目をになっています。私たちの肌が健康でいられるのはこの皮脂のおかげなのです。ただし肌に留まる皮脂の量のバランスが崩れてしまうと様々な問題が出てきてしまう場合があるのです。
皮脂の分泌量が多すぎたり、古い皮脂がいつまでの皮膚表面に留まってしまうと、皮脂が酸化します。酸化した皮脂の事を過酸化皮脂といい、メラニン色素を過剰に生成、シミの原因になってしまうことがあります。その他にも、大量の皮脂は肌に不要な雑菌を繁殖させてしまったり不快なニオイを発生させたり、もちろんニキビの原因にもなることもあります。頭皮の場合、過剰な皮脂が頭皮に留まってしまうと脂漏性という脱毛症が進行してしまう場合があります。
脂漏性脱毛症は脂漏性による皮膚炎でおこる脱毛症で、頭皮に留まっている大量の皮脂の影響で毛穴が詰まり、頭皮や毛根内が炎症、雑菌が異常繁殖することによりおこります。髪の毛(や体毛)にとっては最悪の環境で髪の毛は育ちにくく、抜けやすい環境になっています。症状がひどい場合はご自身で判断せずに専門医に相談するようにしましょう。
ちなみに脂漏性脱毛症を含め過剰な皮脂の分泌は生活習慣を見直すことで改善できる場合があるので気になる方は下記の項目をチェックしてみてください。
- ファーストフード、スナック菓子など糖質・脂質が多い食べ物を控える
- 厚化粧は控え、メイク落としは洗浄力の優しいものを選ぶ
- 良質な睡眠をしっかりととる
- 適度な運動をする
- 頭皮に優しいアミノ酸系シャンプーを使う
毛根鞘と抜毛症
抜毛症は《自分自身で健康な体毛(髪の毛・眉毛・まつ毛・ヒゲ等)を引き抜いてしまう、精神障害》つまり病気の一種です。抜毛症は、トリコチロマニアとも呼ばれ女性にとても多いのが特徴です。健全な自身の体毛を引き抜いてしまう原因の大半がストレスで、中には無意識で髪の毛を抜いてしまっている方もおられます。
何故、毛根鞘のお話で抜毛症の話がでてきたかと言うと、『毛根鞘がキレイに取れたら気持ちいい』『毛根鞘が生理的に無理』等の理由で体毛を引き抜いてしまっている事例があるからです。
もちろん体毛を無理やり引き抜くので皮膚には良くありません。毛母細胞を傷つけてしまい、本来新たに同じ毛穴から生えてくるはずの髪の毛の成長を阻害する原因を作ったり、傷つけてしまった皮膚が修復する過程で毛穴をふさいでしまい、体毛が皮膚から出れなくなる場合もあります。【埋没毛(まいぼつもう)】
毛根鞘に血液が付着、毛穴から血が出ている場合も要注意
無理矢理体毛を引き抜くと毛根鞘に血液がついていたり、もしくは引き抜いた箇所の毛穴から出血しているようなら要注意です。髪の毛は毛細血管を流れる血液から栄養を受け取り成長していきます。この栄養を受け取る箇所を毛乳頭と呼びます。
髪の毛の付け根にある毛乳頭には毛細血管が通っているのですが、出血してしまっているということは、体毛にとって重要な栄養を受け渡しする毛細血管と毛乳頭の連結部分が大きく傷ついてしまっている可能性があります。
毛根鞘を食べる!?
こちらも精神疾患の一つです。主に食毛症(しょくもうしょう)といって子供の頃にストレスが原因で自分の体毛を抜いて、髪の毛や髪の毛と一緒に取れることのある毛根鞘や皮脂を一緒に食べてしまいます。
毛根鞘自体は、アミノ酸が結合したタンパク質でものすごく小さいものなので衛生面さえ気にしなければすぐに体調を崩すといったことは無いですが、慢性的に髪の毛を食べ続けると問題です。
髪の毛は、一見細くて弱そうに見えますが、実は硬質ケラチンと言ってとても強固な作りとなっています。髪の毛というとどうしても細くて弱々しいイメージになりますが、爪や歯が同じ硬質ケラチンというとイメージしやすいかと思います。
髪の毛を食べてしまった場合、胃液等でほとんど消化することができず、体内に留まり続ける場合があるのです。これが蓄積してしまうと、他の食物と絡み合い石のように固くなることがあります。これを《毛髪胃石》と呼ぶのですが、毛髪胃石がさらに大きくなると腸閉塞や潰瘍を引き起こしてしまう可能性があるのあです。これをラプンツェル症候群といいます。
すこし難しい言葉が並びましたが、要は髪の毛を慢性的に食べ続けると病気になる可能性があるのです。
毛根鞘【読み方:もうこんしょう】って何?-まとめ
毛根鞘は髪の毛と頭皮をつなぎとめる重要なパーツですが、抜け毛に毛根鞘が付いているか、付いていないかはさほど問題ではありません。(毛根鞘が頭皮内に留まる場合もあるため。)ただし抜け毛がひどい場合は毛根鞘の働きが弱くなっているのかもしれません。この辺りは自身で判断することはできないので、専門医に相談することをおすすめします。
また、毛根鞘と関りのある抜毛症や食毛症は精神疾患で病気です。当人の意思ではどうにもならなかったりします。『抜かなければいい!』『食べなければいい!』・・・口で言うのは簡単ですが、それで治るようなら疾患とは言いません。近年では症状をコントロール薬などもあるので、こちらも症状のある方は、民間療法ではなく専門医に相談することをおすすめします。