クラクション1

自動車やバイクに標準で搭載されているクラクション。町中を走行していると、このクラクションは様々な場面で使用されています。「進路を譲ってくれた時のお礼」「知人がいたので挨拶」「前方に停車している車両に青信号を気づかせる」「強引なドライバーに対する抗議」等々・・・。

基本的に音量は常に一定で音色も変えることができませんが、鳴らしている時間でいろいろな用途、そしてドライバーの感情が表されるのがこのクラクションです。ただ、クラクションは道路交通法で使用できる場面が制限されいて基本は鳴らしてはいけないものになっているのをご存知ですか?

正しいクラクションの使い方

クラクションは道路交通法上、警音器に該当します。この警音器は道路交通法で使用が制限されているので確認していきます。

第五十四条

車両等(自転車以外の軽車両を除く。以下この条において同じ。)の運転者は、次の各号に掲げる場合においては、警音器を鳴らさなければならない。

一 左右の見とおしのきかない交差点、見とおしのきかない道路のまがりかど又は見とおしのきかない上り坂の頂上で道路標識等により指定された場所を通行しようとするとき。

二 山地部の道路その他曲折が多い道路について道路標識等により指定された区間における左右の見とおしのきかない交差点、見とおしのきかない道路のまがりかど又は見とおしのきかない上り坂の頂上を通行しようとするとき。

2 車両等の運転者は、法令の規定により警音器を鳴らさなければならないこととされている場合を除き、警音器を鳴らしてはならない。ただし、危険を防止するためやむを得ないときは、この限りでない。(罰則 第一項については第百二十条第一項第八号、同条第二項 第二項については第百二十一条第一項第六号)

上記の通りですが、簡単にまとめると以下のような道路標識等で指定された見通しが悪い場所は警音器を鳴らさないといけません。

標識警笛ならせ

「鳴らすことができる」ではなく「鳴らさないといけない」というとこがポイントで、「警笛鳴らせ」の標識があるにもかかわらず、警音器をならさないと道路交通法違反となってしまいます。

そして、警音器を鳴らすもう一つの状況が、「危険を防止するためやむを得ない時」です。警音器をならさないといけない(鳴らすことができる)状況はこの2つ以外にないのです。

つまり冒頭で紹介したクラクションの使用例の「進路を譲ってくれた時のお礼」「知人がいたので挨拶」「前方に停車している車両に青信号を気づかせる」「強引なドライバーに対する抗議」は全て道路交通法違反となってしまうので注意が必要です。

ちなみに、警音器で鳴らすべき場所で鳴らさなかったり、鳴らしたらいけない場所で鳴らすと以下の罰則・反則金・違反点数が適用されるので注意しましょう。

【警音器吹聴義務違反】鳴らさないといけない場所で、鳴らさなかった場合
罰則 5万円以下の罰金
反則金 大型車 7,000円
普通車 6,000円
二輪車 6,000円
原付 5,000円
違反点数 1点
【警音器使用制限違反】鳴らしてはいけない場所で、鳴らしてしまった場合
罰則 2万円以下の罰金又は科料
反則金 3,000円
違反点数 なし

「危険を防止するためやむを得ない時」ってどんな時?

「警笛鳴らせ」の標識、見通しの悪い指定場所での「警音器を鳴らさないといけない」は非常にわかりやすいと思いますが、「危険を防止するためやむを得ない時」は少し漠然としているのでいくつか具体例を紹介しておきます。

停車中に前方の車両がジリジリ後退してきている場合

ミッション車を運転するドライバーなら一度は経験があるのではないでしょうか?、緩やかな上り坂でブレーキを踏まずにニュートラルにしてしまいジリジリ後退。もちろんドライバーはこのことに気づいていません。

こういった場合、後続のドライバーはクラクションを鳴らして、前方のドライバーに車両が後退していることを気づかせる(危険を回避する)必要があります。

並走中の車両が、こちらに気づかず車線変更してきている場合

これも危険防止の為にクラクションを鳴らす必要があります。ただし、(法定速度の範囲内で安全が確保されていることが条件ですが)少し減速や加速をすることで、危険を回避できるのであればクラクションをならしてはいけません。

車両から歩行者を守る為

有名な判例として、「車両の接近に気がつかずにその前方を横断しようという歩行者を認めた場合」というものがあります。

なにも、クラクションは自身の為だけに鳴らすものではありません。クラクションをならすことで、他者の事故を未然に防げるなら躊躇なくクラクションを鳴らすようにします。

「危険防止」と「抗議」を同じにしてはダメ!

道路標識等で指定された「見通しの悪い場所」や危険防止の為にやもえない場合はクラクションを鳴らさないといけないのは、上記で説明した通りですが、幹線道路や高速道路できかれるクラクションの大半は「抗議」=「怒りの感情」のクラクションです。

「無理やり割り込みやがって!!」
「急ブレーキ踏みやがって!!」
「トロトロ走りやがって!!」
「急に飛び出しやがって!!」etc・・・

例をあげればきりがないですが、本来これらの理由ではクラクションはならしてはいけません

警音器(クラクション)を鳴らしてはいけない状況
無理やり割り込まれた すでに割り込まれた後、この状態でのクラクションは危険回避にはあたりません。
急ブレーキを踏まれた 同上。また、この場合の危険回避行動はクラクションを鳴らすのではなく、こちらもブレーキを踏むことにあります。回避後のクラクションは危険回避ではなく、急ブレーキを踏まれたことに対する抗議となります。
低速で走行された 法令上、クラクションをならすべき理由がありません。
交差点からの急な飛び出し 急ブレーキと同様です。

要は、「○○をされたから」というのは「事後」で、事後でクラクションを鳴らすというのは「危険防止・回避」ではなく「抗議」になるのです。危険防止でクラクションを鳴らすのは、事前の物事からの危険回避でなければなりません。

また、事後にする「抗議」=「怒り」のクラクションほど不要なトラブルが起きやすいものです。

クラクションで「キレる」ドライバー達

キレるドライバー

「車に乗ると性格が変わる」・・・よく聞かれるフレーズです。そして個人差はあるものの、変わる方向は決まって穏やかな方ではなく、必ず攻撃的に変わります。これは自動車が「密閉性」「匿名性」「自動車の性能」など様々な理由があります。

自動車は、鉄の塊です。そんな密閉性の高い鉄の塊に入っている(乗車している)と安心感が生まれます。また、アクセルを踏むと人間の足では絶対に不可能なスピードで走行することが可能です。そんな自動車のスペックを無意識に全ては自分自身の力と思い込んで、攻撃的になる傾向があるのです。

そんな攻撃的な状態でクラクションを鳴らされると・・・もうわかりますね。「やり返しても、バレない!」「自分は絶対に正しい、悪くない!」「何があっても負けな!」等様々な思いが駆け巡ります。もちろん、相手も同じようなことを考えています。

そのため、クラクションをきっかけに喧嘩になったり警察に通報しなくてはいけない事態に発展するケースが後を絶たないのです。過去にはクラクションをきっかけに、傷害・暴行事件・殺人事件も起こっています。些細なことで一度しかない人生を台無しにしたくないものですね。