フロントガラスの曇り1

自動車を運転される方なら一度は経験したことがある、フロントガラスやリアガラスの曇り。原理としては、【お風呂場の鏡や窓が曇る】【真冬に部屋の窓ガラスが曇る】【ガラスコップの外側につく水滴】等と同じです。

お風呂場の鏡や窓、また、部屋の窓ガラスが曇る。ましてガラスコップの外側に水滴がついてしまっても、大きな問題ではありませんが、これが高速で走行する自動車となると話は別です。

フロントガラスやリアガラスが曇ると視認性が落ち、安全運転に支障をきたし、事故につながる可能性もあります。ここでは、フロントガラス(自動車車内)の曇る原因とその対策を紹介しています。

フロントガラス(自動車車内のガラス)が曇る原因

結論を先に言っておくと、自動車内のフロントガラスやリアガラスが曇ってしまう原因は結露にあります。つまり結露対策をすることで、車内のガラスの曇りを防ぐことができます。

まずは、結露対策の前に結露が発生するメカニズムについて確認しおきます。

フロントガラスを曇らせる結露発生のメカニズム

空気中には必ず水蒸気が含まれていて、空気温度が高ければ高い程、水蒸気を蓄えれる量は増え、空気温度が低ければ低い程、空気中に含むことができる水蒸気量は少なくなる性質があります。

この空気温度にたいして、空気中に水蒸気を含める量の事を飽和水蒸気量というのですが、この飽和水蒸気量を超えてしまうと、空気中に水蒸気を留めておくことができず、水蒸気が凝縮、結露となるわけです。

夏場に結露をあまり見かけないのは、空気温度が高く空気中に含むことができる水蒸気の量が多いためです。逆に空気温度が低い冬場は空気中に含める水蒸気量が少なくなるため、いろいろなところで結露を見かけることになります。

水蒸気が凝結して結露となる空気温度と湿度の関係

先程紹介したように、空気温度によって空気中に含まれる水蒸気の量は決まっています。(飽和水蒸気量)温度が高ければ高いほど空気中に含まれる水蒸気量の上限は上がり、逆に空気温度が低ければ低いほど空気中に含まれる水蒸気量の上限は低くなります。

そして、飽和水蒸気量の上限を超えると水蒸気が凝結し結露となります。この各空気温度に対して水蒸気が凝結して結露となる温度を露点温度といいます。下記の表は空気温度と湿度から露点温度をおおよそで一覧にしたもです。

露点温度早見表
空気温度/湿度 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%
30℃ 10℃ 14℃ 18℃ 21℃ 23℃ 26℃ 28℃
25℃ 6℃ 10℃ 13℃ 16℃ 19℃ 21℃ 23℃
20℃ 2℃ 6℃ 9℃ 12℃ 14℃ 16℃ 18℃
15℃ -2℃ 1℃ 4℃ 7℃ 9℃ 11℃ 13℃
10℃ ‐6℃ ‐2℃ 0℃ 2℃ 4℃ 6℃ 8℃
※数値はおおよそのものとなります。

表の見方についてですが、例えば空気温度が20℃程度湿度が40%程度だったとします。表を確認すると、露点温度が6℃となっています。これは、冬場の暖房をつけた車内温度にありがちな例です。

この場合、外気温(正確には車内と車外の境界であるガラスの内面)が約6℃以下であれば、そこに結露が発生することになります。この露点温度早見表が理解できると対策もたてやすくなります。

フロントガラスが曇る時の対策

では、自動車のガラス、主にフロントガラスが曇るときの対策をいくつか紹介していきます。上で紹介した露点温度早見表と下記の標準的エアコン回りボタンを照らし合わせながら確認していきたいと思います。

フロントガラスの曇り2

対策① 車内温度と車外温度を近づける

車内温度と車外温度を近づけることでフロントガラス(車内のガラス)が曇るのを防ぐことができます。

露点温度早見表
空気温度/湿度 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%
30℃ 10℃ 14℃ 18℃ 21℃ 23℃ 26℃ 28℃
25℃ 6℃ 10℃ 13℃ 16℃ 19℃ 21℃ 23℃
20℃ 2℃ 6℃ 9℃ 12℃ 14℃ 16℃ 18℃
15℃ -2℃ 1℃ 4℃ 7℃ 9℃ 11℃ 13℃
10℃ ‐6℃ ‐2℃ 0℃ 2℃ 4℃ 6℃ 8℃
※数値はおおよそのものとなります。

空気温度と露点温度の数値が近い部分を確認していきます。フロントガラスを曇らせる結露は空気温度と露点温度の差が大きければ大きい程発生しやすい特性があります。逆にいうと、空気温度と露点温度が近くなればなるほど、フロントガラスを曇らせる結露は発生しにくくなるのです。

露点早見表を見てみると、空気温度と露点温度の差が2℃程度であれば、湿度90%のジメジメ状態でもギリギリ結露は発生しないことになります。対策非常に簡単です。窓をあけたり、外気導入ボタンを押して外気を車内に取り込めば、車内と車外の温度は近づきます。

ただし、真冬や真夏に外気を取り込むのは現実的ではないです。このような場合は湿度を調整してきます。

対策② 車内湿度を下げる

繰り返しになりますが、空気中に留めておける水蒸気の量には温度によって上限がきまっていて(飽和水蒸気量)、上限を超えると水蒸気が凝縮して結露となります。ですので、空気中の水蒸気、つまり湿度を下げることで結露を防ぐことができます。

露点温度早見表
空気温度/湿度 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%
30℃ 10℃ 14℃ 18℃ 21℃ 23℃ 26℃ 28℃
25℃ 6℃ 10℃ 13℃ 16℃ 19℃ 21℃ 23℃
20℃ 2℃ 6℃ 9℃ 12℃ 14℃ 16℃ 18℃
15℃ -2℃ 1℃ 4℃ 7℃ 9℃ 11℃ 13℃
10℃ ‐6℃ ‐2℃ 0℃ 2℃ 4℃ 6℃ 8℃
※数値はおおよそのものとなります。

露点早見表を見てもわかるように、湿度が低いと空気温度と露点温度に差があっても結露が発生しにくいことがわかります。

具体的な対策としては、(梅雨や雨等の)外気の湿度が高い状態であれば、外気を取り込まないようにすると湿度上昇は抑えれます。逆に、外気が乾燥してる冬場であれば外気を取り込むことで車内の湿度は下げることができます。

ですが夏場はともかく、冬場に外気を取り込むのは現実的ではありません。そこで使用するのがエアコンの「A/C」ボタンです。「A/C」とはエアコンディショナー(Air/Conditioner)の事で除湿機能があります。つまり「A/C」ボタンを押すことで、車内の水蒸気量を減らし結露が発生しにくくなるのです。

対策③ デフロスター (Defroster)/デフォッガー (Defogger)を有効活用

デフロスター (Defroster)・デフォッガー (Defogger)共に一般的な自動車に標準搭載されているガラスの曇り防止機能になります。

デフロスター (Defroster)

デフロスターボタンを押すと、エアコンの風を集中的にフロントガラスに当てて結露を取り除いたり結露が付くのを防ぎます。

原理は簡単です。先ほども紹介したように、結露が付きやすい条件の一つとして、空気温度(車内)と露点温度(フロントガラスの温度)差にあります。エアコンの風をフロントガラスにあてることで、空気温度と露点温度の差を縮めることで結露を防ぎます。

この時、車内の湿度が高いとエアコンの風と同時に水蒸気をフロントガラスに当ててしまい、逆にフロントガラスが曇ってしまう場合があります。このような場合は、除湿機能の「A/C」を押すと同時に、外気が乾燥している(湿度が低い)ようなら、外気導入ボタンを押したり、窓を開けることで効果的に結露を防ぐことができます。

デフォッガー (Defogger)

フロントガラスとは違い、エアコンの風が届かない(届きにくい)リアウィンドウの曇り防止には、デフォッガー ボタンが役に立ちます。デフォッガーはエアコンの風の代わりに、リアウィンドウ内に張り巡らされた熱線で窓を温めて結露を取り除いたり防いだりします。

対策④ 窓の汚れを拭き取る

以外に効果的なのが「窓を拭く」ことです。これは、結露を拭くという意味ではありません。簡単に言えば車内の清掃です。

結露は飽和水蒸気量の上限を超えると発生しますが、さらにこの結露がガラス面に付着させやすくするのが、ホコリやヤニ・その他油分等の汚れです。これら汚れには結露が付きやすいのです。この状態は結露と汚れのダブルでガラスを曇らせます。

また、車内は密閉された空間であるためホコリがたまりやすいです。窓ガラスだけではなく車内全体を清潔に保つことでフロントウィンドウやその他窓ガラスの曇り防止につながります。

また、窓を清掃する際、車専用の曇り止めクリーナーやスプレーなどもたくさん販売されているので一度チェックしてみるのも良いかもしれません。

フロントガラスの外側が曇ってしまう場合

稀なケースではありますが、フロントガラス(リアや窓も含む)の内側ではなく、外側が曇ってしまう場合があります。原理はフロントガラスの内側が曇ってしまう場合と同じです。露点温度早見表を見ながら確認していきます。

露点温度早見表
空気温度/湿度 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%
30℃ 10℃ 14℃ 18℃ 21℃ 23℃ 26℃ 28℃
25℃ 6℃ 10℃ 13℃ 16℃ 19℃ 21℃ 23℃
20℃ 2℃ 6℃ 9℃ 12℃ 14℃ 16℃ 18℃
15℃ -2℃ 1℃ 4℃ 7℃ 9℃ 11℃ 13℃
10℃ ‐6℃ ‐2℃ 0℃ 2℃ 4℃ 6℃ 8℃
※数値はおおよそのものとなります。

フロントガラスの内側が曇るのは(車内の)【高い空気温度】そして【低い露点温度】、この差が大きいと発生しやすいです。これと逆のことが起こるとフロントガラスの外側が曇ります。

具体的には、梅雨の時期や同じく夏の暑い時期に霧が発生していたり、雨が降って高温で湿度が高い状態で、車内を冷房でガンガンに冷やしていると発生しやすい現象といえます。

表で確認してみると、例えば外気の空気温度が30℃で湿度が80%だったとします。この時の露点温度は26℃になっているのがわかると思います。これは、車内温度が26℃以下になっている場合に車外に結露が発生して窓ガラスが曇る可能性があることをしめしています。

対応策は3点。まずは1つめ。窓の外についているのは水です。いわば雨とかわりません。つまりワイパーを動かくすことで結露を取り除くことができます。ですが、外気が高温多湿状態であればすぐさま、ガラスが曇り始めます。

2つ目にに挙げられる対策は、外気温と車内温度をできるだけ近づけることです。先ほどの例で外気の空気温度が30℃で湿度が80%の時の露点温度は26℃です。つまり車内の温度が26℃以下ならガラスが曇り、26℃以上ならたとえ湿度が80%であっても理論上はフロントガラスの外側が曇ることはありません。

最後はデフロスター (Defroster)です。結露は境界面(窓)を境として高温多湿側につきます。デフロスターを作動させてフロントガラスに風を当て続けることで、フロントガラスの内側と外側の温度の差が縮まり曇りがフロントガラスの下の方から徐々に取れ始めます。

ただし、フロントガラスは厚みがあり、なかなか温度が表に伝わらないので内側の曇りをとるのとは違い、外側の曇りを取り除くのにかなりの時間を要する場合があります。この状態で走行するのはかなり危険なので、運転は必ず曇りがとれてから、もしくはワイパーを併用しながら走行するようにしましょう。