「斤量」という言葉をご存じでしょうか?競走馬の騎手と騎手が身に着けている重量のことを指す場合もありますが、今回は紙のお話です。
紙における斤量とは、紙の厚みや規格重量を指し示す俗称となります。・・・業界人の方以外は???だと思うので詳しく解説していきたいと思います。
紙箱を作る時の斤量はとても重要。紙の斤量について詳しく解説
まず、一言で「紙」と言っても、その種類は様々です。類似商品でも製紙メーカーが違えば品名は異なりますし、王子ホールディングスや日本製紙、レンゴー、大王製紙、北越紀州製紙等の有名製紙メーカーから、家族経営で紙を製造しているところもありその道のプロでも全ての紙の把握はまず無理でしょう。
そんな「紙」ですが、大きく分けると2種類に大別することができます。1つは、化粧箱やディスプレイ什器、陳列什器等に使用される厚手の紙。この厚手の紙のことを「板紙(いたがみ)」と言います。そしてもう一つは、チラシ、パンフレット、書籍などに主に使用される薄い紙、この薄い紙のことを「薄紙(うすがみ)」といいます。
板紙や薄紙も銘柄によって様々な規格があり、化粧箱を作るうえで紙の厚みを示す斤量はとても重要です。どんなに素晴らしいデザインや形状を考えても斤量を間違えてしまうと箱にならなかったり、箱になっても強度が弱く使い物にならなかったり・・・大きなトラブルの原因になってしまうことも。
斤量は最終的にはプロと相談しながら決めていけば良いことですが、自身で斤量を知ることで企画力・提案力に差がでてきます。また斤量を知ることで価格交渉もしやすくなるでしょう。まずは、斤量と深く関わる坪量について確認していきたいと思います。
紙の坪量(つぼりょう)
坪量(米坪)とは紙を縦1メートル×横1メートルにカットした時の重さのことを指します。表記は[g/㎡]で表されます。例えば、板紙(コートボール)は以下のように表記されます。
【コートボール350g/㎡ 800×1100 31kg】
この[350g/㎡]にあたる部分が坪量です。次に続く800×1100というのは紙のサイズになるのですが、厚みを示すうえで、この紙のサイズは意味を持ちません。どういうことかというと、下のイラストのように800×1100mmであっても、400×550mmであっても同じ銘柄の350g/㎡なら厚みは同じです。
ちなみに後述で詳しくみていきますが、【コートボール350g/㎡ 800×1100 31kg】は1㎡あたり350gのコートボールを800×1100mmサイズにした時の100枚の重量は31kgになる。という意味となります。
坪量には紙の銘柄によって様々なものがありますが、板紙については主に、230g/㎡・230g/㎡・270g/㎡・310g/㎡・350g/㎡・400g/㎡・450g/㎡・500g/㎡・550g/㎡・600g/㎡と表記されるものが多く、一般的な化粧箱に使用される坪量は310 g/㎡~400g/㎡が大半を占めています。
注意しておきたいのは、銘柄違いによる紙の厚みについてです。たとえば、コートボール400g/㎡の実際の厚みは、約0.5mmとなりますが、グレードが上の板紙であれば、同じ400g/㎡なのに約0.45mm程度になる場合もあります。これは洋紙のグレードによって、密度が大きく変わる為です。
繰り返しになりますが、坪量は1㎡あたりの紙の重さです。つまり、同じ坪量なのに用紙の厚みに差がでるのは、単純に密度の差がでているからです。先ほどの例でいうと、たかだか0.5mmと0.45mmの差は0.05mmです。見た目はほぼわかりませんが、化粧箱にしてさわってみると、その違いが案外わかります。
同じ坪量であればグレードの高い板紙の方が密度がUPするものが多く、紙は薄くなりますが、その分紙は硬くなり強度もアップします。さらに平滑性も良くなり印刷ののりもよくなるものが多いです。
ちなみに、板紙の坪量は号数で表記されている場合もあります。号数は[50g/㎡]を1号として換算します。例えば、コートボール400 g/㎡であれば、コートボール8号(#8)と表記される場合もあります。以下は、板紙でよく使用される号数の早見表となります。
坪量 | 号数 | 読み方 | 実際の厚み |
230g/㎡ | 4-6号 | よんのろくごう | 約0.3mm |
270g/㎡ | 5-4号 | ごのよんごう | 約0.35mm |
310g/㎡ | 6-2号 | ろくのにごう | 約0.4mm |
350g/㎡ | 7号 | ななごう | 約0.45mm |
400g/㎡ | 8号 | はちごう | 約0.5mm |
450g/㎡ | 9号 | きゅうごう | 約0.6mm |
500g/㎡ | 10号 | じゅうごう | 約0.65mm |
550g/㎡ | 11号 | じゅういちごう | 約0.7mm |
600g/㎡ | 12号 | じゅうにごう | 約0.8mm |
次に薄紙についてですが、薄紙も基本的に板紙と同様ですが、ラベルには坪量は表記されず【銘柄+重量+サイズ】で表記される場合がほとんどです。具体的には以下のような感じです。
【コート紙 110kg 788×1091】
これは、コート紙という薄紙を788×1091mmサイズにした時の紙の重さが110kgであることを示しています。感の良い方なら気づかれたと思いますが、前述で紹介した板紙コートボール400g/㎡ 800×1100 は31kgと紹介しました。ですが、今回紹介したコート紙はコートボールとほぼ同サイズなのに110kgとコートボール3倍以上の重量となっています。
理由は簡単です。板紙の場合は、100枚の時の重量を表示しているのに対して、薄紙の場合はその10倍の1000枚の重量を表示している為です。仮に、コート紙110Kgを板紙同様に100枚の重量で表記とするなら10分の1の重量で11kgとなります。
少し、話が脱線したので坪量の話に戻します。薄紙についても洋紙の銘柄によって坪量は様々ですが、使用頻度が高い、コート紙と上質紙の坪量は以下の通りとなります。
コート紙の坪量 | 上質紙の坪量 |
---|---|
73.3g/㎡ | 52.3g/㎡ |
79.1g/㎡ | 64.0g/㎡ |
84.9g/㎡ | 81.4g/㎡ |
104.7g/㎡ | 104.7g/㎡ |
127.9g/㎡ | 127.9g/㎡ |
157.0g/㎡ | 157.0g/㎡ |
紙の連量(れんりょう)
「連量」・・・業界人以外はまたも、聞きなれない言葉ですね。連量とは、1連の紙の重量のことを表します。連とは紙の規格単位で、一般的に化粧箱等に使用される板紙は[1連=100枚]となり、カタログやパンフレット、書籍などに使用される薄い紙は[1連=1000枚]となります。
前述で紹介した、紙の表記方法
【コートボール350g/㎡ 800×1100 31kg】
【コート紙 110kg 788×1091】
を例にするなら・・・・
板紙である、コートボール350g/㎡であれば、800×1100mmサイズが100枚(1R)で31kgという意味になり、薄紙のコート紙は、坪量が省略されていますが、127.9g/㎡のコート紙、788×1091mmサイズが1000枚(1R)で110kgという意味になります。
ちなみに板紙も薄紙も共通して1連と言いいますが、板紙の方は正確に言うと1ボード連(1BR)と言います。
紙の規格判
紙には規格判といって、様々な工業規格サイズがあります。まず薄紙の規格判はサイズが大きい順に、四六判・B列本判・菊判・A列本判の4種となります。
次に板紙の規格判はサイズが大きい順にL判・K判・M判・F判・S判となります。各サイズは以下の表を参考にしてみてください。
主な板紙の規格判サイズ | |
L判 | 800×1100mm |
M判 | 730×1000mm |
K判 | 650×950mm |
S判 | 820×730mm |
F判 | 650×780mm |
主な薄紙の規格判サイズ | |
四六判 | 788×1091mm |
B列本判 | 765×1085mm |
菊判 | 636×939mm |
A列本判 | 625×880mm |
新しい商品を企画する場合、通常企画した商品に対して、適した規格判の紙を探しますが、商品価格をできるだけ下げたいのであれば、規格判サイズを頭に入れ、規格判サイズに合わせた商品企画をすることで、紙の無駄(ロス)がなくなり費用を節約できるようになります。
紙の値段の出し方
工業規格の紙は2種の方法で価格が決まります。1つは紙の重さに対して価格を決めるキロ単価。そして紙1枚に対しての価格を決める枚単価があります。
一般消費者からすると、キロ単価より枚単価の方がわかりやすくしっくりくるかと思いますが、取引量の多い銘柄はキロ単価で売買されるものがほとんです。
2021年現在購入する量にもよりますが、コートボールのキロ単価は100~130円程度が相場だと思います。今回は計算がしやすいようにキロ単価が100円だったとします。この時のコートボール400g/㎡ 800×1100の値段は・・・・
先程紹介した表と照らし合わせてみる、コートボール400g 800×1100 の連量は35kg。これは100枚の時の重量です。つまり、キロ単価100円の場合35kg×キロ単価100円でコートボール400g 800×1100 100枚の値段は3,500円ということになります。
薄紙の時も同様です。例えばコート紙の四六判110kgの値段について求めています。コート紙の相場は150円~200円程度。今回は計算しやすいように、キロ単価150円と仮定します。
コート紙四六判の連量は110kg。つまり110kg×キロ単価150円で16,500円ということになります。コートボールの3,500円と大きな差があるように見えますが、コートボールの1連(1BR)は100枚です。これに対してコート紙の1連は1000枚となります。コートボールと同じ100枚で換算するのであれば、1,650円ということになります。
ちなみに、コート紙四六判110kgの包装単位は250枚なので、キロ単価150円と仮定した場合の、1束あたりのお値段は16,500円×0.25で4,125円ということになります。
まとめ-斤量と紙!化粧箱を作るための基礎知識
今回は【斤量と紙!化粧箱を作るための基礎知識】についてまとめさせていただきました。
紙の斤量は化粧箱のクオリティーとコストに直結してきます。化粧箱を量産する前は、必ず使用する紙の【銘柄】【斤量】を合わせたサンプルで形状確認・強度チェックをしてから依頼をかけるようにしましょう。